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「ねえねえ、レン君別れたらしいよ」
え、と思わず声をあげた。一瞬できた空白を縫うように、わあっと歓声が上がる。誰かがゴールを決めたらしい。
男子がサッカーをしているのを見ながら、女子は運動場の隅で休憩をとっていた。目の前では、秋の突き抜けるような青空の下で男子が元気にサッカーに興じている。友人は周囲を窺ってから、あたしの方に身を寄せて声を潜めた。
「レン君と付き合ってた女の子から直接聞いたから間違いないと思う。一昨日の夜に、レン君からフッたらしいよ」
「……そっ、か」
「ふうむ。その反応からするとやっぱりリンは知らなかったな?」
友人は顎に手を当てて「なるほどねえ」と何事かを納得した様子だった。あたしはぼんやりと友人からグラウンドへ視線を移した。クラスメイトと一緒に、楽しそうにボールを追うレンは普段と何ら変わらないように見える。
「でもどうして別れちゃったんだろう、うまくいってるように見えたんだけどなあ。ねえリン、別れた理由とか本当に何も聞いてないの?」
「……聞いて、ない」
もごもごと答えると、友人はじとりとした視線を送ってきた。そして身を乗り出し、強い口調で「ねえ、リン」と言った。
「前々から思ってたんだけどさ、最近あんたらおかしくない? 前みたいに一緒にいること少なくなったし、それどころか最近喋ってすらいないように見えるんだけど。もしかして喧嘩でもしたの?」
強い態度で迫られ、あたしはまごつく。レンとは手紙を破った日から一言も口をきいていない。今の状態を喧嘩と呼べるのかは微妙なところだった。お互いに怒っているというよりも、気まずくなっているという表現の方が正しいような気がする。しかし彼女に今の状況を説明する気にはなれなかった。言ったところで理解してもらえるとは思えない。
黙って下を向いていると、あたしに話す気が無いことを悟ったのか、友人は呆れを含んだ溜息を零した後に肩を竦めた。
「まあ無理に話してもらおうとは思わないけどさ。私だって前みたいにべたべたくっついてろって言ってるわけじゃないし。いくら双子だからってあの仲の良さは異常だって私も思ってたもん」
異常。
どきん、と心臓が跳ねた。
「あんた達があんまり仲良いから変な噂も流れて心配してたんだよ。それを考えると今くらいが一般的だとは思うけ、ど……って、あ、リン。休憩終わりみたい。行こ」
ぱっと友人が立ちあがってグラウンドへ走り出す。急かすように名前を呼ばれて、あたしものろのろとその背中を追う。交代で休憩に入った男子の集団とすれ違うが、レンと目が合わないように顔は俯かせたままだった。
わかってる。そんなことしなくたって、レンはあたしなんか見てない。
重い気持ちを抱えたまま、白線で描かれたコートの中に入った。あらかじめ決められていたチームに分かれると、すぐに試合開始の笛が鳴る。いつもなら一番にボールを追いかけるのに、なかなか足が動こうとしなかった。
「リン!」
味方からボールのパスが回ってきた。あたしは走り出す。頭を切り替えようとするのに、友人の言葉が耳からどうしてもから離れない。
異常。
異常、異常、異常。
お前達は異常。
お前達双子は異常。
弟にそんな感情を抱くお前がもっと異常。
「リーン、リンってば! 逆、逆っ。そっちは私たちのゴールだって!」
「えっ」
振り返ると友人が反対のゴールの近くでぶんぶん手を振っていた。ヤバい、戻らなきゃ。
慌てて方向転換しようとして足が縺れる。体勢を立て直す暇もないまま、バランスを失ったあたしは派手に転んだ。
「い、ったあー……」
「ちょっとリンっ、大丈夫?」
「リンちゃんが転ぶなんて珍しいねえ。立てる?」
試合を中断して集まってきたクラスメイトたちに支えられながら立ち上がる。右の足首が鈍く痛んで思わず顔をしかめた。
「足、怪我したかも……」
「嘘っ、大丈夫? センセー、リンが怪我したみたいーっ」
駆け寄ってきた先生に、すぐに保健室に行くように言われた。見れば明らかに足首は腫れあがっているし、試合に参加するのはどう見ても無理そうだった。あたしは情けない気持ちと申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら同じチームの子たちに謝った。
「ごめんね、途中で抜けちゃって」
「そうだよー。リンが抜けちゃったらウチのチームは大打撃だよー……ってのは冗談だけど。本当に大丈夫? ついていこうか?」
「平気平気」
ごめんね、ともう一度謝りコートを出る。カッコ悪いなあ、あたし。自己嫌悪で項垂れながら、ひょこひょこと右足をかばうように歩いて校舎へ向かう。休憩中の男子がたむろしている傍らを通る時は平静を装って普通に歩いたつもりだったが、クラスメイトの1人が「あれ」と声をあげた。あたしはぎくりと体を強張らせる。
「鏡音怪我したの? 大丈夫?」
「う、うん、まあ。」
「でも歩くの辛そうじゃん。おーいレン、姉ちゃんが怪我したらしいぞーおんぶしてやれ」
クラスメイトが突然口にした名前にあたしはぎょっとする。
「い、いいってば! たいしたことないから!」
「遠慮すんなって。あ、ほら。来た来た」
現れたレンと一瞬目が合ったが、すぐに視線を逸らした。すごく嫌そうな顔をしてるように見えたのは、多分、気のせいじゃない。
「……何?」
「鏡音が足怪我したって言うからさあー、保健室に――――」
「本当に大丈夫だから!」
クラスメイトの言葉を遮るようにあたしは言った。しん、とその場が静まり返る。気まずい空気が漂うのを感じて、あたしは慌ててその場を取り繕う言葉を探した。しかし、あたしよりも先に沈黙を破ったのはレンだった。
「本人がああ言ってるなら大丈夫だろ」
ずきん、と棘が刺さるような痛みが胸に走る。
「えー、でもさあ」
「いいの!」
本当に、いいから。
あたしはそう言うと、クラスメイトとレンの横をすり抜けた。もちろんレンが引き留めることは無い。「何お前ら、喧嘩したの」というクラスメイトの言葉が聞こえてきたが、何も聞こえないふりをした。知らず知らず、唇を噛みしめていた。
……レンの言うとおりだ。自分から断っておいて、何を勝手に傷付いているのだろう。
保健室の先生に手当てをしてもらい、残りの時間は授業に出ずにこのまま保健室にいることにした。骨に異常は無かったようで、とりあえずは一安心だ。
「それじゃあちょっと職員室行ってくるから、ベッドで寝てても良いわよ」
「あっ、はい」
「その代わり、寝てる人がいるから静かにね」
「わかりました」
先生が出ていくと保健室はしんと静まり返った。窓の外から歓声がここまで届く。サッカー、どうなったかな。負けてないと良いけど。
先生のお言葉に甘えて眠ることにしたあたしは、2つあるベッドの空いている方にごろんと寝転がった。薬品の冷たい匂いを感じながら目を閉じると、ついさっき見たレンの顔が瞼の裏に蘇った。2ヶ月前の出来事がフラッシュバックする。あたしはぎゅうと目を瞑って体を小さくした。
何も考えたくない。眠ってしまおう。少なくとも、眠ってしまえば何も考えないですむのだ。
その時、向かい側のベッドからカーテンが開く音が聞こえた。
あれ、起こしちゃったのかな。あたしはそっと目を開けた。そしてその白いカーテンの向こう側にいた人物を見て、息を呑んだ。
「ミ、クオ」
仏頂面でこちらを見下ろしていたのはミクオだった。あたしは跳ね起きる。
「な、な、何してるの」
「見てのとおり寝てたよ。うるさいのが来たからたった今起こされた」
ここでも気まずい沈黙が落ちる。今日は厄日なのだろうか。
ミクオとは河原で会った日以来、ほとんど顔を合わせていなかった。まともに目も合わせられなかったし、何を話せばいいのかわからなかった。河原での出来事。ミクオの真剣な顔。肌に感じた吐息。思い出しただけで顔が熱くなる。あたしは赤くなっている顔を見られないように慌てて下を向いて、ベッドを囲うカーテンを掴んだ。
「……じゃ、じゃあ起こしてごめんね。あたしも寝るから、おやすみ」
「待てって」
早口で言ってそのままカーテンを閉じようとしたが、ミクオの手がそれを阻んだ。不意に縮まった距離に驚いて、思わず弾かれるようにカーテンから手を離した。
「……あ」
ひどいことした。
そう思ったのはあたしを見るミクオの顔が、一瞬傷付いたような顔をしたからだ。そんな顔はさせたくなかったのに。意地悪だけど、ミクオは私の大切な幼馴染だった。
そう。
幼馴染、だった。
「ご、ごめん、ミクオ、その」
「そんなに警戒しなくても別に何もしないっての。保健室に体操服なんてマニアが喜びそうなシチュエーションだけど、生憎俺にそういう趣味は無いから」
いつもと変わらない軽口。そのことに少しほっとした。ふとミクオが、包帯が巻かれたあたしの足首に気付いて目を瞬かせた。
「何だ、珍しい。怪我したんだ」
「あ……うん。ちょっとぼーっとしてて」
「運動神経の良さが取り柄みたいなもんなのにな」
馬鹿にしたようなミクオの口調に、あたしはむっとする。
「自分が勉強できるからって自慢しないでよね」
「俺がリンと違って勉強も運動も出来る優等生なのは事実だから仕方ない」
「その優等生が保健室でさぼり?」
「そのさぼってる優等生にテストの点数で勝てない人が何言ってんの」
「……っ、昔から思ってたけどっ」
あたしは堪え切れなくなって、さっきまでの気まずさも忘れて声を荒げた。
「ミクオって他の女の子には優しいくせにあたしにはほんっとに意地悪だよね」
「俺は本当のこと言ってるだけだよ」
「何それ! ミクオってあたしのこと――――」
思わず声を荒げて、そして自分が続けようとした言葉にはっとして口を閉ざした。
「……私のこと?」
促すようなミクオの口調に言い淀む。どうしてミクオがこんなに冷静でいられるのかがわからなかった。これじゃまるで立場が逆だ。
あの行為の意味。
あたしの勘違いでなければ、ミクオはあたしにキス、をしようとした。
一体どういうつもりであんなことをしたのか、あたしはまだ聞いていない。
ミクオの視線を感じつつ、慎重に言葉を選びながら口を開いた。
「……あの、さ。ミクオ」
「ん」
「あの時の、あれ」
「あれ?」
「河原で、あたしに……しようとしたでしょ」
キス。
自分で言って再び顔が熱くなるのがわかった。しかしミクオはいたって冷静な態度で「そうだね」と顔色一つ変えずに一言答えただけだった。まるであんなことは取るに足らない出来事だったとでも言いたげな反応だ。意識している自分を馬鹿にされているような気持ちになって、あたしはますます恥ずかしくなる。
「そうだなって、なによ。ミクオ、どういうつもりなの? もしかしていつもみたいにからかっただけなら、」
「俺はリンが好きだよ」
ぴちょん。
洗面台の蛇口から落ちた水音が響いた。
あたしは瞬きも忘れてミクオを見つめた。
「……え」
「順番が逆になったけど、いずれ言うつもりだったんだ。俺はずっと前からリンが好きだ」
静寂が、部屋を支配する。ぴちょん、とまた滴が落ちた。
思わず、またあたしをからかってるんでしょう、と言おうとした。もう騙されないんだからね、と言って笑おうとした。だけど目の前のミクオの目を見たら、そんなことは言えるはずもなかった。誤魔化したら、駄目だ。そう思った。
ミクオがあたしのことを好き。
何だか信じられない。まるで現実味がないように感じるのは今まで考えたことも無かったようなことだからだろう。
目まぐるしく思考が回る。何と言えば良い。あたしは、どうすれば良い。考えなきゃ、考えなきゃ。
そう思うのに。
目の前にいるのはミクオで。あたしに好きだと言ったのもミクオなのに。
なのにどうして浮かぶのはレンの顔なんだろう。
あたしはミクオとは違う。ミクオみたいに相手に気持ちを伝えられない。伝えることは許されないのだ。
こうやって言い聞かせる度、息が詰まりそうになる。自分の感情をもてあまして、途方に暮れる。怒りがじりじりと身を焦がす。いつもはやり場のないその感情が、目の前のミクオに向けられていくのが分かる。
どうしてあたしは伝えちゃ駄目なのに、ミクオはこんなに簡単に伝えることが許されるんだろう。そんなのおかしいじゃないか。不公平だ。好きだって気持ちは同じなのに。ううん、絶対にあたしの方が思う気持ちは強いはずだ。それなのに、ずるい。
ずるい、ずるい、ずるいずるいずるい。
「簡単に」
ミクオは、ずるい。
「簡単に、好きとか、言わないでよ」
低く呟いて俯く。シーツをぎゅっと握りしめた。
「どうせミクオにとって一番近い存在の女の子があたしだったってだけだよ。本当は誰だっていいんでしょ。あたしなら簡単に受け入れるだろうなんて思ってるんでしょ! そんな簡単な気持ちで好きなんて言わないでよ! あたしが今、どんな気持ちか知らないくせに……あたしがどんなに辛いか」
「じゃあ簡単に好きって言えないお前の方が偉いってのかよ」
私はミクオの声にぴくりと体を震わせ、顔をあげた。あたしを見下ろすミクオの目を見て、ミクオが本気で怒っているのがわかった。あ、と思わず息を呑んだ。
「お前が今苦しんでるのは知ってるし、そんな時にこんなこと言うのも悪いとは思ってる。だけど……だからって俺の気持ちを否定するようなこと言うなよ! 俺は簡単な気持ちでお前のこと好きって言ってるわけじゃない!」
馬鹿リン。
そう言って俯いたミクオの顔が悲しみで歪んでいるのを見て、ようやく自分がどんなに酷いことを言ったのかを理解した。ミクオがあたしに伝えてくれた気持ちを、他でもない私が否定してしまった。それがどれだけ傷付くものなのか、考えればわかるはずなのに。
――――あたし、本当に最低だ。
自分が辛いからって、八つ当たりでこんなことをしてしまうなんて。こんなの何の言い訳にもならない。
唐突に、ミクオの姿がじわりとぼやける。馬鹿、泣くな、泣きたいのはミクオの方なのに。泣いたらますますミクオが困ってしまうじゃないか。
だけどあたしの意志に反して、涙はどんどん溢れてくる。もう誰の前でも泣かないだろうと思ったのに、結局このざまだ。
「……リン」
「ごめ……あたし……ごめんなさい。ごめんなさいミクオ、あたし自分のことばっかりで、どうしたらいいか全然、わかんなくて……それで」
「いいよ、リン。今抱え込んでること、全部俺に話してみろ」
「でも、だって……」
「いいから。変なとこで遠慮すんじゃねーよ馬鹿」
そうやってミクオは笑った。普段は意地悪なことしか言わないくせに、肝心な時はひどく優しい。思えばあたしはミクオのそんなところが好きで、今でも傍にいるのかもしれない。
ああ、でも、ミクオの気持ちを知った今、そんなことを伝えるわけにはいかない。きっとミクオは悲しんでる。だけどそんなことをおくびにも出さずに、あたしに笑いかけてくれている。
それに比べたら自分は何て弱いんだろう。本当にずるいのは、あたしだ。臆病で泣き虫でその上わがままなあたしだ。ミクオの優しさに甘えて利用して、そして傷付けている。ミクオに縋ることが、どんなに残酷なことかわかっているくせに、それでも縋ってしまう。
ずっと怖かった。怖くて不安で、誰かにこの気持ちを吐露することで楽になれるような気がした。
「どうしよう。どうしよう、ミクオ……あたし」
そこで言葉を切って、そして、
「あたし、レンのこと、すきみたい」
言葉にすればそれはひどく呆気なかった。
まるで大したことの無い事実のように、ともすればひどく滑稽にその言葉はあたしの耳に響いた。だけどその言葉が完全に空気に霧散した瞬間、事実は重くあたしの肩にのしかかってくる。
「で、でも、レンはあたしの弟で、こんなこと知られたらきっと、お母さん泣いちゃうし……っ、友達にも、絶対気持ち悪いって思われちゃう。そ、れに、きっと……きっと、レンにきらわれちゃうよお……っ!」
それが何よりも怖かった。レンはあたしの弟だ。そしてレンにとってのあたしは双子の姉だ。そんな存在が自分のことをこんな風に思っているなんて知ったら、きっとレンは離れていく。そんなの嫌だ。絶対に嫌だ。レンに拒絶されてしまったら、あたしの世界は間違いなく壊れてしまう。それが怖くて仕方ない。そんなことになるくらいなら、この気持ちが溢れる前に蓋をしてしまおうと思った。蓋をして、いつか薄れてしまうまで見ないふりをしておけば良いと思った。だけど同時に辛くて堪らないのだ。レンが大切で大切で、誰よりも近くにいたいと思ってしまう。
リン、とミクオが静かにあたしの名前を呼んだ。あたしはミクオを見た。ミクオの目はしっかりとあたしを捉えていた。
「何が正しいかどうかなんて周りが決めることじゃないし、もちろん俺が決めることでもない。だから、やっぱり最後は辛くても苦しくても、リンが自分なりの答えを探すしかないんだ。焦って結論を出そうとしないで、ゆっくり考えろ。誰にも言えないなら俺が相談に乗ってやる」
そう言うとミクオは柔らかく目を細め、手を伸ばした。ミクオの掌がくしゃりとあたしの頭を撫でた。
「確かにリンがレンを好きなことは、世の中じゃ良く思われないと思う。だけどさ、仕方ないだろ。好きなもんは、好きなんだからさ」
ミクオの掌の温かさと優しさに、ますます涙が止まらなくなる。色んな感情が胸に込み上げてきて苦しい。
「それに俺の知ってるレンは、お前が思っている以上にリンのことを大切に思ってるよ。レンはリンのことが大好きだ。……そしてリンもそうなんだろ?」
あたしは頷く。こくこくと何度も頷いた。
ミクオは笑った。今まで見たことないくらい、とびきり優しい顔で。
「――――じゃあ大丈夫だ。何も心配することなんて無いだろ」
あたしは泣いた。声をあげてわあわあ子供みたいに泣きながら、ひたすらごめんとありがとうを繰り返した。
たくさん言いたいことはあった。辛い思いをさせたことについて謝って、こうして励ましてくれたことへのお礼を言って。そして、ミクオの気持ちに応えることは出来ないけど、ミクオがいてくれて良かったって心の底から思ってるということを伝えたかった。だけど、どの言葉もあたしの気持ちに上手く当て嵌まらなかった。
「お前泣き顔可愛くないなあ」とミクオは笑ったが、今日はそんなミクオの憎まれ口もまるで気にならない。この幼馴染は、意地悪でぶっきらぼうで不器用で、だけど無茶苦茶優しい奴だということを、あたしはずっと前から知っているのだ。
10.07.28
なんて眩しくて悲しい色!